

Nさんの主訴は話しにくいということでした。
開咬の人はサ行が発音しにくいとか、息がもれるということがありますが、Nさんくらいの歯並びで話しにくいというのは意識のしすぎの場合も多いのですが、他の不定愁訴も多かったので治療に踏み切りました。
発音に関する悩みは、だれが聞いてもわかるくらい問題がある場合と、本人しかわからないくらいの微妙な内容の場合があります。
とくに英語の細かい発音を治したいなどと言われると、治療後に本人にしかその違いが理解できない程度であるならば、後々トラブルの元になりますので、患者さんには治療しないほうがいいのではないかと説明をします。
Nさんの場合は、外見や不定愁訴も気にしていましたので治療を行いました。
結果的に、話しにくいということは気にならなくなったと言われたのでよかったのですが、細かい発音に関する主訴は、治療するかどうか慎重になります。
治療後に残っていた症状としては、肩こりがある、口を開けると音がする、左側が噛みやすい、疲れやすい、がありました。
テレビに出ている人のような歯並びになりたいと、きれいな歯にあこがれる人は年々増えつづけています。
テレビの影響で、審美歯科という言葉も一般によく知られるようになり、審美治療で歯を削ってきれいにしようとする人も多くなってきました。
欧米では、歯並びをきれいにするには矯正治療が多いのですが、これに対して、日本では歯を抜いたり歯を削ったりする審美治療を選択される方が多いように思えます。
実際に、テレビに映るタレントの歯並びを見ていますと、歯科医の目からもさし歯ではない、自然な歯の人のほうがやっぱりきれいだなと思ってしまいます。
今は歯科医の多くが審美治療に力を入れていますが、本来、患者さんの歯を守るべきはずの歯科医のほうから、簡単ですから歯を削ってきれいにしませんか、とすすめる歯科医の気持ちに疑問を感じてしまいます。
もちろん、審美治療のメリットもデメリットも患者さんが十分理解され、そのうえで歯を削ってでもきれいにしたいというのなら、歯科医としては自分の持てる知識と技術を駆使して、最善の治療をしてあげるべきです。
しかし、いいことだけしか言わないで、治療後に体調が悪くなったり、削ったために虫歯になりやすくなって歯を抜かなければならなくなったときに、どう責任をとるつもりなのかと考えてしまいます。
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